<harmony/>(映画) 感想、映画と原作のネタバレ
<harmony/>
私の心が、幸福を拒絶した
多才な知識、引き込まれるストーリー、衝撃的なラストで、人々魅了する
伊藤計劃の最後の長編小説を映像化した作品。
また、原作とは異なるラストに監督の思いは込められているのか?
【点数-10点満点】
◆総合:8点
・映像美:7点、演出・効果:6点、脚本:8点、構成:9点、キャスト10点
【感想】
当方原作既読済み。
見る人を選ぶ作品ではあります、水に浸り続けて身体が冷たくなっていく、そんな鬱々とした気分にさせてくれます。
原作を知らないで映画を見たら、ラストに、
あぁあああ・・・・
っとなると思われる。そんな作品。
ストーリー・キャラ・脚本・声優・演出・映像・音楽、全てよく出来ている作品。
◆ストーリーと脚本:原作と異なるところは大筋ではラストだけです。台詞・キャラの重要度・重視などは、多々異なりますが、原作の雰囲気をブチ壊しにすることなく、映画ハーモニーとして完成させていただいています。
◆キャラデザと作画:ネットでも様々な意見はありますね。確かにキャラの顔作画崩れも多々あったり、映画のキャラデザが確かにイマイチだったりしますが、その他の部分でバランスが取れている為か、私は大きな不満はありませんでした。
◆演出・映像:上記で取り上げたキャラデザ以外の背景や街の風景、近未来の世界観を魅せてくれています。少し異形とも感じるビルや配色も、ウォッチ・ミーに依存した世界の異様さを感じる事が出来てとても満足です。
ただし、演出のムラが気になったかも、キャラによってムラではなく、ココのシーンは凝った演出だなー。あれ?ここ演出強調しないんだ?の様に少し想像とは違いました。
◆音楽:作中のBGMも良かったですが、やはり主題歌「Ghost of a smile」がとても素敵で、今でも聞いたり、カラオケで歌ったりしています。ただの EGOIST贔屓なのかもしれませんが、
歌詞のラスト
今日はこんなに晴れてるから
君がもしよければ散歩でもしにいこう
君に会いたい
心から思う
歌のラストを君に会いたい、心から思う。で〆られてしまうと、トァンの気持ちと重なって、感極まってしまいます。
原作好きの方は、既に映画を見られている可能性が高いですが、
伊藤計劃先生の<harmony/>をベースに作った、映画作品だと思って見てください。
原作と異なる改変は多々あり、なんでこんなシーン入れて、あのシーンを省いた?と思うかと思います。
見る人は選びますが、作品のバランスが良い作品です。物語の導入部を見て、世界観が合いそうと思えば是非見てください。お勧めの映画です。
【私情を交えた感想】
真剣に作品と向き合って鑑賞すれば、大筋のストーリーは、そんなに難しい話とではないと思います。途中で出てくる用語や、世界のシステムを鑑賞中に考えるとストーリーが追えず内容がわからなくなるかもしれませんが。
全ての映画にいえると思いますが、「話がわからない」、「なんらかの意味が解らない」、「内容がわからないと」、思う方は、素直な気持ちで、まず大筋のストーリーだけを追うと映画を楽しむ事が出来ると思います。
映画鑑賞後にも「わからない」部分が気になるのなら、原作を買って見たり、映画を2回目見に行ったり、ネットで解説している人のページを見て補完したりしてみてください。
とか、言いつつ、自分も別の作品で脚本ダメだとツッコミ入れまくってますがね!!
あと、原作からなのでアレですが、キャラの名前読めない!!!発音どないなるん?!
【キャラ&キャスト】
◆霧慧 トァン(きりえ トァン):沢城みゆき
主人公:過去にトラウマを持つ、この世界は生きにくいと思っていた。
この世界の特殊な機関、WHO螺旋監察の上級監察官。色々な権限を持ち合わせる特級な階級。
学生時代にミァハ・キアンの3人で自殺事件を引き起こしている。自殺の為の薬を飲んだが治療により助かった。
◆御冷 ミァハ(みひえ ミァハ):上田麗奈
今作品のキーパーソン:トァン・キアンと深い繋がりを持つ人物。
頭脳明晰だが、彼女自体は他人には興味がなく、社会への反抗心が強かった。
学生時代にトァン・キアンの3人で自殺事件を引き起こしている。自殺の為の薬を飲んだが助からなかったとされていたが・・・。
*彼女の声と話し方が、脳内麻薬みたいというのか・・・聞いていると、フワフワしてくる感じが危ない。本当に危ない。
◆零下堂 キアン(れいかどう キアン):洲崎綾
重要人物:世界を受け入れ、周りと変わらない平和な生活を送っている。
トァンとは自殺事件後も繋がりを持っており、今作品でのとても重要な役を担っている。
学生時代にトァン・ミァハの3人で自殺事件を引き起こしている。自殺のに使用する薬を飲まず、親に相談したため、トァンの命は助かった。
◆霧慧 ヌァザ(きりえ ヌァザ):森田順平
トァンの父親。研究に没頭し、トァンの前から失踪し行方不明となっている。
◆オスカー・シュタウフェンベルク:榊原良子
螺旋監察官の首席監察官であり、トァンの上司にあたる人物。トァンの危なっかしい行動に、螺旋監察官としての責を果たすように諭す。(トァンは言う事をきかないが。)
◆エリヤ・ヴァシロフ:三木眞一郎
インターポールのちゃらそうな捜査官。ちゃらそうだが、実は重大な秘密を持っている。
◆アサフ : 大塚明夫
物語のはじめに登場。ジェニールの砂漠の民。
【ネタバレ】ー最近見ていないので時系列間違えてたらすみません。それと細かいところは抜かします。
近未来謎の感染症が広がり、人類は対抗策として、体内に健康管理デバイスwatch・meを取り付けた
watch・meは、人々の健康管理だけではなく、心までも監視して健やかにする。
優しさで心が殺されていく世界。
優しさで殺される地獄…
1.謎のETMLと謎の装置・・・
2.螺旋監察官トァン
砂漠でジェニール砂漠の民と、この世界で禁止とされている、酒・タバコの交換を行っている。そこへ違法偵察の為の無人偵察機が現れ、トァンは無人偵察機を破壊する。
偵察機破壊後移動中の社内で、亡くなった友ミァハの夢をて涙を流すトァン。
螺旋監察のキャンプ地に戻ると、オスカー主席監察官がトァンの違法行動を咎め、内戦地よりの離脱、国への帰国を申し伝える。
トァンは、偽者のように着飾った国が嫌いだった。
3.零下堂 キアンとの再開
空港で旧友である零下堂 キアンがトァンの帰りを出迎えた。
かつて、トァン・キアンそしてミァハは、この偽善と偽者に満ち溢れた優しい世界に、爪痕を残すため自殺を試みた同士であった。
だが、世界への反抗を共に試みた友キアンは、偽善に満ち溢れた世界と同調してしまっていた。
4.トァンとキアンの食事
キアンはトァンを食事に誘う。レストランで食事を食べながらキアンは、最近の事、亡くなったミァハの事、自殺しなかった真相をキァンに話していく。トァンはキアンの話をはじめは聞き流していたが、次第に自分の真意を話してくキアンの言葉に、少しずつ耳を傾けていた。
キアンの声が次第に小さくなっていき、視線もうつむき加減になっていく、トァンは彼女の話を俯きながら聞いていた、また、世界に同調したキアンへの興味が薄れていたため、彼女の変化には気づけずにいた。
5.ごめんね、ミァハ・・・
水の入ったグラスに赤い雫が落ちる。
トァンは不思議に思い顔を上げると・・・
キアンは話をしながら握り締めていたナイフを自分の喉に深くさしていた、一面はキアンの血の海となる。
キアンは薄れゆく意識のなか、
「ごめんね、ミァハ・・・・」と言う言葉を残し、絶命する。
(水を差すようですが、キアンは物凄い深く首にナイフを突き立てていました、何故ごめんね、ミァハとつぶやけたかは不明です。原作にはなかった気がした。)
6.WHO螺旋監察緊急招集
各地でキアンと同じような自殺者が同時に多発した。
この世界には自殺などありえず、ましてや同時に多発となる異常性。
そして、事態は動いた、この事態の犯人と名乗る人物からテレビに犯行声明が流される、
「健康・幸福社会を壊す。1週間以内に誰か1人を殺さなければ、世界中の人間を自殺させる」と
7.事件の背景にミァハ
トァンはキアンが最後につぶやいた「ごめんね、ミァハ・・・」から、事件の背景に御冷 ミァハが関連していると捜査に乗りだす。
ミァハの両親から、ミァハは養子であり、紛争の孤児だったこと、
そして亡骸はトァンの父霧慧 ヌァザにより、研究対象とされた事を知る。
8.トァンと父
トァンは父ヌァザの居場所を突き止め、父親との久々の再会を果たします。
家族を捨て行方不明となっていた父を、トァンは咎めますが、どこか憧れがあったのか、次第にトァンの態度は和らいくように見えました。
9.ハーモニー・プログラム
ヌァザはかつて、非人道的な試験を人に施すグループに所属していた事をトァンに告白する。自殺で死ねなかったミァハを、その実験体としてミァハを利用した事を・・・。
非人道的な試験、ハーモニー・プログラムそれは、一番最適な選択を実行する、自らの意思ではなく常に最善の選択をする。プログラムを人に書き込むという・・・
しかし、恐ろしい副作用もあり、幸福感に満たされた意識のない人間に書き換わってしまうという・・・ミァハは集団自殺をスイッチとして、政府にこのプログラムを人々に発動させる事を目的としていた。
(ハーモニー・プログラムが運営できれば、世界から争いや悩みは消え、幸福で平和な社会が実現するはずとの思いから研究されたものでした。)
10.ミァハは生きている
上記、ハーモニー・プログラムを実施されたミァハはプログラムから回復をした。そして行方をくらませた。
11.ヴァシロフの追跡
インタポールのヴァシロフは、ミァハの仲間だった。(ミァハが仲間と思っているかは不明)
ヴァシロフはヌァザを捕捉しようと追跡していた。トァンと共に逃げるヌァザとヴァシロフの追随。ヴァシロフに追い付かれ対峙するトァン。トァンとヴァシロフは共に銃を抜き銃弾を放つ。ヴァシロフはトァンの銃弾に倒れた、トァンはヌァザに庇われたため、傷を負わずにすんだが・・・。
ヌァザはトァンに言う最後に父親らしいことができただろうか?と。
そしてヌァザは息を引き取った。
重症ながらもヴァシロフは生きていた、そしてトァンに言う、ミァハはチェチェンにいる。トァンの事を待っていると・・・。
ヴァシロフは苦しみから逃れるため、トァンに殺してくれと懇願する。
トァンは、ヴァシロフへ銃弾を放った。(父を殺された怒り、そしてヴァシロフへの哀れみどちらかは不明。たぶん怒りが強いと思われる。)
12.ハーモニー・プログラム実行までの猶予
犯人の犯行声明約束の1週間の日、トァンはチェチェンの地に立っていた。
13.ミァハとの再開
チェチェンの軍基地にミァハはいた。彼女は昔と変わらず、トァンの様子に木をかける事なく話していく。
昔この軍基地にて、少女達が酷い目あっていたことを、
そして、ミァハもその一人だと言う事を・・・。
ミァハは元々、余計な感情を持たず最適の行動のみを実施する少数民族の一人だった。だが、軍基地での地獄のような日々を過ごし、感情が芽生えたという。
ミァハはこの後天的に生まれた感情を消し去り、かつての意識のなく、ただ幸福に包まれた自分に戻りたい。
そして、この優しさで殺される世界の人々も、意識のない世界に一緒に連れて行きたいと語る。
14-A.映画ハーモニー
トァンは、ミァハの負の感情、酷い過去に触れ
ミァハを抱きしめる。
そして、ハーモニー・プログラム実行を受け入れる。と答えるトァン。
だが、
こんな世界はどうでもいい、ただアナタだけは、幸福だけの意識のない世界へ連れて行かせない。
ミァハは私の知っているミァハのままでいて、変わらないでいてほしい。
「愛してる、ミァハ・・・」
と
ミァハを撃ち殺してしまう。
(トァンはミァハに憧れていた、トァンの愛しているミァハを意識がない世界に連れて行かれるぐらいなら・・・そんな気持ちで、トァンは引き金を引いてしまった)
そして、プログラムが発動されてしまう。
1.に佇む学生時代のキアン
そして、さよなら、私・・・とETMLが括られ
END
14-B.原作ハーモニー(映像で見てないため、脚色を咥えないために端的に記載)
トァンはハーモニー・プログラム実行を受け入れる。
だが、
そこにアナタの場所はない。アナタには与えない!
個人的な復讐の為、トァンは、
ミァハに向けて銃弾を2発放つ。
キアンの分、ヌァザの分・・・。
トァンはミァハに憧れていた。故に同じ髪型にして、同じように世界に反抗的になり、彼女が持ちえたであろう知識を身につけた。
トァンは意識消失までの間に、死に行くミァハに友として接した。
ミァハの望み、故郷の山を見たい。トァンは山が望めるところまでミァハを運んだ。
ミァハの望み、見届けてほしい私の死を。トァンは彼女の死を看取った。
そしてプログラムが発動し、トァンの意識消失と共に
END
◆ラストの終わり方とキャラの感情が、映画と小説では全然異なります。
方や純愛風。方や復讐劇風。どちらも作品として、見る側に壮大なインパクトを与えると思います。
愛の為、世界を見捨てるか。
復讐の為、世界を見捨てるか。
どちららにしても・・・ですが、作品の印象が最後によりまったく変わってしまうため、原作派は映画を良く思われていない方も多いようです。
是非原作と映画を両方見る事をお勧めします。
そして、私の大好きなビジュアル画像
とても長くなりました、ここまで読んでいただきありがとうございます。
では、この編で。